青と白と緑の世界。パルテノン神殿と奈良の意外なつながり
朝、8時。
寝坊した!と5分で準備を済ませ、
ホテルを出発した。
いざパルテノン神殿へ。
9月のアテネは、日中は30度を超える。
そして、その光の強さといったら、
言葉のとおり、「刺すように暑い」
親切なホテルのスタッフから、
暑いから、パルテノン神殿を見学できる
時間がスタートする8時には行った方がいいよ。
と教えてもらっていた。
それにしても、アテネは、ほんとうに植物が青々としている。
日陰は、まだひんやりとしているけれど、
日向にでた瞬間、もう汗ばむ。急がねは。
と、地図ももたずに、でてきたので、
道行く途中で、なんども、人々に
行き方を訪ねた。
朝、仕事の準備にとりかかる人たちや、
ムール貝の皮むきをしているレストランオーナー、
落ち葉を集めている人、
みんな、慣れたように「あっちだ」
と指差して教えてくれる。
パルテノン神殿は、
古代ギリシア時代にアテナイの
アクロポリスの上に建設された、
アテナイの守護神である
ギリシア神話の女神アテーナーを祀る神殿
と言われている。
小さな小道を抜けて、石の階段を登って
いきながら、
少しづつ近づいてきた。
不思議な静けさと、ひんやりとした空気、
パルテノン神殿の周りには、松をはじめとして、
いろんな木々がある。
まるで、森にいるように、
葉や木の、湿った香りが心を落ち着けてくれる。
なんとも、甘くて、ウッディーで、
神聖な香りがする。
遠くに白亜の建物が見えてきた。
英国人の人に、写真をとってほしいと、
頼まれ、ほんの少し話しをした。
彼は、これからご両親と合流して、
ギリシャの島めぐりだという。
午前9時、もう多くの人が集まっている。
高地にあるパルテノン神殿は、すでに突き刺すような
日差しが暑い。
でも、積みげられた石を触ると、
ほんとうに、びっくりするほど、ひんやりしている。
アテネの街の印象は、この白が美しい大理石で
つくられたパルテノン神殿を代表するように、
「白の世界」だと感じた。
そこに、色とりどりの「扉や窓」に、
もりもりと生い茂る植物たち、
この花は、恐ろしいほど甘い香りで、
道行く人を魅了していた。
そして、それを飾るのは、
やっぱり、真っ青な空の青。
こんなナチュラルな家と緑の融合、
いいなぁと、猫たちが眠っているのを横目に
通り過ぎて、
せっかくの天気のいい朝、
やっぱり、大好きなカフェを探すしかない。
角を曲がったところに、
花がきれいに咲くレストランの前にある、小さなカフェを
見つけた。
その景色の下で、
一人の50代くらいの男性が、
あまりにも心地良さそうに本を片手に、
コーヒーを飲んでいたので、
わたしは、そのうしろ姿が見える席に座った。
人が静かに、物思いにふけっている姿は、どこか美しいなぁと思う。
このカフェは、お店の人に聞いたとこによると、
ギリシャ・アテネ出身の女優であり、政治家でもあった
メリナ・メルクーリへのオマージュなのだそう。
彼女のことを知らない人は、ギリシャにはいないそうだ。
ギリシャ版、アイスカプチーノである、
フレッド・カプチーノは、かなりビターだった。
少し甘くしもらうのがオススメです。
終わりに「石の博士から」
後日、日本人でヨーロッパに石の買いつけに二つ月に1回は
ヨーロッパへに来るという「石の博士」と出会い、
こんなことを教えてもらった。
ヨーロッパでとれる石の中でも、
ギリシャの石は、限りなく「白」なのだと。
そして、このギリシャの真っ白な一枚板の大理石がある
日本の場所を知っているか?と聞かれた。
その答えは、奈良の金堂内にある白大理石須弥檀[しゅみだん]
なのだそう。その上には、あの薬師三尊像が並んでいる。
なぜか?それは、かつて、
薬師三尊像が土の中から掘りおこされたとき、
その下に、きちんと白亜の大理石が置かれていたからだそう。
そん時代にあったとおりに、再現すべきということで、
「これと同じ石を持ちかえるように」という指令を受けて、
必死で、よく似た一枚板を求めて、遠くギリシャまで飛んだそうだ。
彼曰く、どうやって?その時代にギリシャの石が奈良に運ばれたのか?
まだ解明されていない謎だという。
実は、仏像めぐりが趣味であるわたしは、2年ほど前に奈良の金堂を
訪れた。その時は、仏像の美しさに見とれて、その下にある「石」になぞ、
目もくれることがなかった。
でも、将来、また訪れることがあったなら、
わたしは、「石」へのまなざしとともに、遠いギリシャの白亜を思い出す。
おたく的かもしれないけど、こういう実体験をともなう知識が
わたしは、人生を豊かにしてくれると、本気で信じている。
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